2007年9月、日産自動車が、車両間の相互通信により、交通事故の低減を目指し、第4世代となる先進安全自動車「日産ASV-4」を開発したと発表、また、2007年10月31日 ホンダ、インフラと車両の協調による安全運転支援システムの実証実験に参加、2008年3月3日には、トヨタ自動車が「車車間通信及び、路車間通信との連携による安全運転支援システム」の実用化に向けた公道実証実験を開始したと発表し、大手各社の自動車の安全対策への取り組みにおいて「車車間通信と路車間通信」は大きな研究開発テーマの一つであるといえる。
そこで今回は、自動車の「車車間通信と路車間通信」技術について、日本特許データを分析することで、各社の技術競争力、取り組みをみていくことにする。
<本分析内容は、技術分析レポート 『自動車の「環境対策」、「安全対策」の行方』から抜粋しています>
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交通事故を防止する技術の動向を特許情報から分析する。まずは,車車間通信及び路車間通信技術を取り上げる。
すでに一部の高級車ではセンサーで検知した情報により運転者に警告したり,運転を制御したりすることにより交通事故を防止するための技術が実現化されている。しかし,カメラやミリ波レーダー,赤外線センサーなどを用いた搭載機器のみに頼る技術は,例えば出会い頭の衝突など,相手車両が見えにくい遮蔽物がある場合は,適用上の限界がある。
これに対し,車車間通信や路車間通信を利用すれば,他車の種別,スピード,位置や路面の状況など,通信相手の把握可能な情報を通信によって入手することができる。車車間通信,路車間通信を活用したドライバーの認知支援システムに向けた環境整備は,早ければ2008年にも専用周波数帯域の適用や通信プロトコルの決定など,実用化に向けた条件が整い始め,その後に各自動車メーカーや各電機メーカーによる商品化が進むと見込まれている。

車車間及び路車間通信技術分野全体の状況を概観するために,日本国特許の出願状況(件数及び人数)を分析した。
車車間及び路車間通信技術分野に出願された特許出願件数の推移を図41に示す。1998年頃から出願件数が伸び始め,2001年にピークを迎えた。その後も出願件数は高い水準を維持している。2001年に件数がピークを迎えた一因として,路車間通信の事例としてETC(自動料金収受システム)が本格的に導入されたことが挙げられよう。
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【図41 車車間及び路車間通信技術に関する出願件数の出願年推移】 |
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一方,出願件数の推移と同様,1998年頃から出願人数も伸び始め,2001年にピークを迎えた(図42)。その後の減少傾向は出願件数以上に著しい
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【図42 車車間及び路車間通信技術に関する出願人数の出願年推移】 |
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この結果,2002年以降,この分野で出願する企業または個人は減ったが,一社または一人当たりの出願件数は逆に増えてきている可能性がある。この背景の一つとして,2001年前後から技術が実用段階を迎え,この技術の事業化に実際に取り組もうとする企業とそうでない企業が明確になってきたことがあると思われる。
この時期,車両通信技術で使用する周波数帯域や通信プロトコルはまだ標準化されていないが,安全運転支援という目的達成への要件がほぼ固まったことから,実際のアプリケーションを検証する段階に入ったと考えられる。
走行支援道路システム開発機構(略称:AHS研究組合)による2000年の実証実験を経て,リアルタイムの路車協調支援システムが構築できることが実証された。これ以降,理論的な出願ではなく,実証実験を経て得られた結果を基に発明された補足技術が,実験環境を独自で所有もしくは共同開発先と共有できる企業(出願人)から出願されていると推測される。

図43は,出願人がこの分野で出願している時期の最初と最後をそれぞれ出願開始年,出願終了年として,出願を開始した出願人数と出願を終了した出願人数を年ごとにプロットしたものである。ただし,本分析の母集団は1985年以降に出願された公開特許または登録特許を対象としていることから,1985年以前に出願を開始していても出願開始年は1985年,また2005年以降に出願したものがあっても,それがまだ公開されていなければそれ以前の出願年が出願終了年となる。
これをみると,1998年まではこの分野で出願を開始する企業の数が出願を終了する企業の数を上回っていたが,2001年前後から両者は拮抗している。すなわち,引き続きこの分野に企業の新規参入がある一方,2001年あたりからは,従来からこの分野に着手していた企業の中でも,今後さらにこの分野に注力していこうと判断した企業と,逆にこれ以上注力しないと判断した企業に分かれてきている可能性がある。
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【図43 車車間及び路車間通信技術に関する出願開始・終了人数の出願年推移】 |
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日立、富士通テンに技術に注目
車車間または路車間通信技術に取り組む各社の日本特許の出願状況を示したのが図44である。これをみてまず気づくのが,圧倒的な強さを持つ企業の不在である。出願件数1位のデンソーでさえ,シェアでみると全体の1割にも満たない。一方,件数11位以下の出願人の出願件数が全体の半分強を占めている。ちなみに,件数1件の出願人は276社と全体(418社)の実に半分以上にのぼる。
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【図44 車車間及び路車間通信技術に関する企業別出願件数シェア/PCIRシェア】 |
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圧倒的に強い企業が不在という状況の中で,各社は製品化する際に,他の分野の技術で差異化を図る,自社単独あるいは他社と連携する形でこの分野を強化する,といった戦略を採ることが予想される。各社がどのような戦略を採るかは,今後この技術がどのような形で具体化され普及していくのかにかかっていると思われる。
一方、PCIでみると、日立製作所や富士通テンが件数に比べてPCIで比較的大きくシェアを上げている。これらの企業は件数では存在感は大きくないものの,技術の質という点で強さを確保していると言える。また,出願件数上位のデンソー、松下電器産業、トヨタもPCIでも件数とほぼシェアは等しく,質の点でも一定の強さを確保していることが分かる。

上でPCIを用いて技術の質的強さをみてきたが、ここではその質的強さを「他社注目度」と「技術波及度」の2つに分解し、それぞれの観点での各社の強さをみていく。ここで「他社注目度」とは、他社の事業に抵触するが故に他社がその特許をつぶそうとどれだけアクションを起こしたかを測る参考指標であり、「他社注目度」が高いということは他社に対して排他力を発揮している特許を多く保有していると考えることができる。また、「技術波及度」とはその特許に関わる技術を基にしてどれだけ多くの改良技術が生まれているかを測る参考指標であり、「技術波及度」が高いということは多くの改良技術の基となるような基本発明に関する特許を多く保有している可能性があると考えることができる。
図45をみると、日立製作所が他社注目度、技術波及度のいずれでもシェアが高く、この分野で事業化を見据えた基本技術を保有している可能性を示唆している。また、富士通テンも他社注目度でシェアを大きく上げており、自社の事業を優位に進めることを可能にするための独占排他力の強い特許を多く保有していると推測される。
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【図45 車車間及び路車間通信技術に関する各社の他社注目度/基本発明度】 |
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図46は,出願件数上位10社を対象に出願件数の時系列推移を示したものである。各社とも1998年頃から活発に出願をしているが,その中でも直近にトヨタの出願件数の伸びが著しい。
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【図46 車車間及び路車間通信技術に関する企業別出願件数の出願年推移】 |
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「PCI 」(Patent Competency Index )は,SBIインテクストラが提案する,技術ストックの「質」(=技術競争力)を測るための尺度である。PCI はSBIインテクストラが多くの顧客に対して実施してきたコンサルティング経験の中から生まれたもので,特許のライフサイクルにおいて取得可能な客観的な数値項目を基に算出している。
PCI には,特許の質的傾向を示す次のような情報が含まれている。
外部からの注目度
どれだけ多くの特許に引用されているかなどの複数の項目により算出する。
自社の注力度
外国出願をしているかなどの複数の項目により算出する。
権利/技術の強さ・広さ
各特許のステータス(登録・未登録・消滅など)や応用分野の多さなどの
複数項目により算出する。
PCI は特許データが含んでいる質的要素を示す項目を定量化し,各項目にウェイト付けを行うことにより算出される。企業の技術的な競争力を評価するための指標である。企業の3つの力を測る評価指標として,PCIRには次の用途が考えられる。。


1つは,
事業・製品の背景にある技術を測る製品・事業競争力評価指標である。市場において優位な地位を確保するための技術的背景を持っているかどうかを判断する指標である。
2つ目は,
将来の市場を見据えた技術力の優位性を測る技術競争力評価指標である。今後の市場において必要とされる技術を備えているか,またはこれを開発する潜在的技術力をもっているかどうかを判断する指標である。
3つ目は,
特許の質を評価するための特許競争力数値化指標である。自社の保持している特許は,それが属する技術領域において価値あるものなのかどうかを判断する指標である。
PCI は企業の中の経営企画や事業企画部門,研究開発部門,知的財産部門などの部署で,経営戦略や事業戦略に関わる技術及び特許を評価するのに利用されている。なお,本分析ではPCI を算出するのに,SBIインテクストラが開発した特許戦略ソリューションシステム「StraVision 」を使用している。

<分析対象の特定(母集合)>
1985年1月1日以降の出願されたFI=H04B7/26F or H04B7/26H または Fターム=3D301EA86 を含む日本出願特許。
<本分析に利用したPCI指標>
全分析対象特許に対し、「他社からの注目度を示すPCI指標項目」に100%のウェイト付けを行なって各特許のPCI値を算出した後、特許のステータスにより以下のパーセンテージをかけて算出した。
登録特許:100% 審査請求済み特許:50% 公開済み特許:30% 消滅特許:0%
上記の分析は、
『技術分析レポート 自動車の「環境対策」、「安全対策」の行方』
から一部抜粋しています。


◎本分析レポートに関するお問い合わせ:
SBIインテクストラ株式会社
電話:03-6229-0780
HPよりお問い合わせ:https://ssl.intechstra.com/contact/index.html
◎レポート概要:
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